いつもと変わらない日々


いつもと変わらない日々 5

いつもと変わらない日々があるのは、なんとすごいことなのだろう。
その日々は、実は当たり前ではないと気づく時がある。

大人になり、結婚し、子供が与えられ四十代になったある時、耳の下に違和感を感じて地元の病院で相談したら紹介状を書いてくれて大学病院で検査をすることになった。幾つかの検査をし、他の病院でもMRIの検査もした結果思いもしなかった悪性の病気の診断が下ってしまった。
診断がくだされた午後、病院で昼食をとっていたら妻から連絡があり、検査結果を聞いてきたが、電話では言いたくなかったので自宅に戻ってからいうことにした。食事もしているうちに気持ち悪くなってしまい、残してしまった。
病院から帰る道の景色はその朝来た時と全くかわっていないはずなのに、見え方が全く変わってしまった。色が消えているように見えたのだ。ともかくそのように見えた。自宅にもどり結果を妻に話したら泣いていた。妻の感情に引き動かされて、私も動揺を覚えた。

いつもと変わらない日々を失った日だった。

それからしばらくの間、私は健康と免疫力を取り戻すことができることを手当り次第行った。自宅に眠っていた健康器具を駆使して、日常生活でストレスを感じないようにとも気をつけた。知り合いも、沢山の身体によいものを送ってきて下った。すべてを試してみた。

1ヶ月ほどして最終的に手術をするか判断するための検査をした結果、今までにあったしこりがほとんど消えていた。右耳の下部分を除いて。それで、違う病名に変わった。その時点では、良性か悪性かはわからず、その細胞診検査するためには、切らなければならず、一度切るとそのまま手術をして切り取らなければならないということだった。悪性か良性かの結果は手術後の検査結果を待つ必要があった。

夏の暑い盛りに、初めて全身麻酔の手術をし、無事終わった。しばらくして良性の結果がでた。夏の終わりに高校の同窓会があり、耳の下に包帯を巻きながら出席した。皆口々にどうしたのかを聞いて心配してくれた。状況を説明すると皆安堵してくれた。

それから、また、いつもとかわらない日々が過ぎていった。





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